いとう治療院ブログ

【治療戦略と症例】 胃の治療 

2013/9/12

【患者情報】60代後半女性

【主訴】胃もたれ・食欲不振・すぐに満腹になる・心窩部の不快感

【随伴症状(その他の症状)】
・便秘、手足の冷え、立ちくらみ、耳閉感、
・甲状腺機能低下傾向
・子宮筋腫にて摘出 20年前

【現病歴】数年来の慢性萎縮性胃炎がある。ピロリ菌の除去で一時期、調子は持ち直したものの、春先(数ヶ月前)から今に至っては服薬をしているものの症状に改善の兆しがなく鍼灸治療を試みる。

・腹部:左季肋部の硬結・上腹部(中カン付近)に硬化・左中注・大巨にはやや圧痛と硬結・臍周囲の硬化
・座位にて、ヤコビー線は左が下垂、L5棘突起の出っ張り

【処置】
脉差にて右関上の虚・左寸口の虚(やや左関上は相対的に強い)
脉状は虚脈
⇒太白・衝陽・大陵⇒胃兪・脾兪補法で鍼灸
⇒T567に兪穴の凝りを浅刺にて(やや発汗している)
(T7はオ血処置としても)

【考察】
施術自体は脾虚治療としてのオーソドックスなものである。脉状はやや太くなり、流動性(胃の気)も少し出たので1回目の治療を終了する。ある程度の回数は治療が必要と思われるが、当面は3回~5回通院してもらい、その後の状態を把握することとする。
治療回数がかかる理由として、病状が「虚」、「気血」が両方とも足りていない。「気血」は消化器を中心とした「脾」の臓で産出される。鍼灸治療で「脾」の力を変化させることは難しいことではないが、治療のその場で達成できることはあくまでも、身体を良い方向に導く方向付けである。実際に「気血」は日々の食事や休養によって徐々に養われていくので、継続的に「脾」の力を安定させることが必要である。

※記号456-1