いとう治療院ブログ

めまい・頭痛 椎骨脳底動脈血流促進処置(通称:イ・ヒ・コン)

2016/4/23

  • 一般鍼灸
  • 鍼灸と適応疾患
  • 長野式鍼灸治療

めまい・頭痛の鍼灸治療

◆ 長野式鍼灸治療 ~ 椎骨脳底動脈血流促進処置(通称:イ・ヒ・コン) ~

※専門的な内容(鍼灸師向け)が多く含まれます。一般の方は →→→ここをクリック

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(注)はりきゅういとう治療院の独自の解釈が含まれます。

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【症状】 一過性脳虚血発作

椎骨動脈・脳底動脈の循環に機能的な不調があることが前提である。

頸部運動や体位変換によるめまい(頸性めまい)や後頭部の重さ(頭痛)を生じる時に適用する。吐き気・嘔吐にも。

その他、四肢の麻痺・しびれ、視力異常、嚥下困難、歩行障害、言語障害なども適用する意見もあるが、一過性脳虚血発作発症した方のごく一部は一定の時期を経て脳卒中(脳梗塞が多いと思われる)を発症するケースがあり、上記の症状が見られた場合は、鍼灸師は手を出さずに専門医の受診を促したい。

【所見】

  • 脉状:浮いた脉状が多い(浮脉)
  • 脉差:左関上・尺中が相対的に浮いている
  • その他:後頭部の熱感・発赤・発汗、後頚部「天柱」「風池」「完骨」の緊張・硬化・膨隆

【処置】 脳血流の改善を目的とした処置

  1. 陰谷・曲泉・上四トク (補法)
  2. 委中・飛陽(補法) → 崑崙(瀉法) ※イ・ヒ・コン
  3. 天柱・風池・完骨 (鬱血に瀉法)

【処置のコツ・注意点】

  • 一過性脳虚血発作とその他重篤な疾患との慎重な鑑別が求められる。脳底動脈硬化症・梗塞・血栓の有無を総合的にしなければならない。
  • この症状を呈する方は、体力消耗(所謂、虚していること)が多く、軽い刺激が望ましい。従って、「陰谷」「曲泉」の補鍼は丁寧な微量の雀啄が良い。「上四とく」は「完骨」や胸鎖乳突筋(特に上部)の緊張緩和をターゲットにすると効果を出しやすいように思う。
  • 「委中」「飛陽」の取穴は、「委中=L2」「飛陽=T7」付近の起立筋の緊張緩和を目的にする(岐子先生)と良いと認識している。また、よく「置鍼したら何とかなるでしょ?」的な刺鍼を行う人が多いと聞くが、これは本当に間違いで「委中」と「飛陽」の雀啄刺鍼は全身全霊をかけて行いたい。
  • 潔先生は「崑崙」において、大きな振幅によるリズミカルな雀啄を施していたと聞いている(※伊藤はこの手技を未だに会得できない)。「崑崙」は難しいと感じる。「崑崙」においては後頭部の熱感や後頚部の硬さの解消を目的にすると良いだろう。
  • 頭部の虚血状態が酷く、頭部冷感が強い際は「天柱」「風池」などの後頚部の瀉法は控えて補法が良い。冷えが酷いときは灸頭鍼も良い。
  • 中高年以降に発症者が多い理由として、脊椎の変性が起こり始める時期がある。椎骨動脈は頸椎の内部を通過しているので、脊椎変形の影響を受けやすいのだろう。椎骨脳底動脈血流促進処置以外に筋・骨格系の処置も同時に行うことが多い。
  • 浮脉という点では、初期の風邪(傷寒)にも有効なケースが多い。
  • この処置が有効なめまい・頭痛は春(3月から5月初旬にかけて)多く見受けられる。
  • 浮脉ではない時(具体的には実脉?イ・ヒ・コンの証は虚で浮脉のイメージだから)は「陰谷」「曲泉」「上四トク」は省いても良いときが多い。後頚部の熱感は相当あるので、「委中」「飛陽」「崑崙」への刺鍼により一層の時間が取られる印象。

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  • 「新治療法の探求」によると、脳底動脈の”充血”を消失させることができるようだ。
  • 椎骨脳底動脈血流促進処置(イ・ヒ・コン処置)は血流改善処置(血管系処置)の中に有りながら、自律神経・内分泌処置にも含まれる。椎骨動脈→脳底動脈が自律神経の最高中枢である視床下部への栄養に関与するからだろうか。[脳底動脈→視床枝(?)、脳底動脈→後交通動脈→視床(下部)枝]
  • 単純に頭痛(片頭痛ではなく後頭部痛や全体の頭重)の処置や、首肩の凝り・緊張への処置としても活用できる。膀胱経・足の太陽経筋の症状として考えてもらってよいと思う。
  • 横V字(C7T1T2)処置との相性が良い。また、督脉の重要ポイントである「後谿」と組み合わせることも多い。

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(参考文献)

  • 長野式臨床研究会 基礎コース 資料
  • w-key 長野式研究会 基礎コース資料
  • はりきゅう いとう治療院カルテ(2007~2016)
  • 第6版 分冊 解剖学アトラスⅢ 神経系と感覚器
  • 長野潔 著 鍼灸臨床 新治療法の探求
  • 長野潔 著 鍼灸臨床わが三十年の軌跡

(ブログリンク)

めまいのイメージ

2013年3月 【鍼灸の戦略と症例】 めまい

https://www.hq-ito.com/blogs/2013/03/16/184/

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